コラム「物語をキーワードにキャリアを考えてみよう」

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前回のコラムでは、自分自身のキャリアを自己物語として考えたとき、具体的にどのように創り上げ、語っていけばいいのか。サビカスのキャリアストーリー・インタビューを紹介し、筆者の回答例とキャリア・テーマを示してみました。

最終回の今回は、2020年代の日本社会の姿を予測しつつ、物語社会の行方を展望し、キャリアコンサルタント(=キャリアカウンセラー)は何ができるのかを考えていきます。

2020年代の日本社会はどのような姿を現すのでしょうか。まずキャリアに深く関わる「働き方」から想像してみましょう。

第2回でも取り上げましたが、2020年代はますます日本型雇用制度に捉われない、多様な雇用形態・賃金制度が広まり、様々な問題を抱えつつも多様性があたりまえと考える時代になるかもしれません。フリーランス・個人事業主といった働き方を選ぶ方々も今まで以上に増えていくことが予想されます。

個人個人が自らのキャリアと照らし合わせて働き方を進んで選ぶことがより容易になっているかもしれません。

一方、日本の産業と消費はどうでしょうか。現代の産業はサービス業が中心であり、IT・観光・旅行・第4回で取り上げたポピュラーカルチャー産業などは、2020年代でもより発展していると思われます。

消費については、モノの消費よりも、様々なイベントを通した体験や経験を消費することを好む傾向に変わりつつあることは以前から指摘されており、個人個人の体験や経験、そしてそれを友人などと共有することを大切にする価値観がますます広まっていくと思われます。

このように想像していくと、働き方であれ消費であれ、多様化と同時に個別化がますます進んでいくと予想されます。それはあらゆる場面で「小さな物語」を創り、語る機会が増えていくことを意味するのではないでしょうか。

仕事上のキャリア・趣味のキャリア・地域活動のキャリア等々、私自身しか経験していないオリジナルなキャリアを「小さな物語」として語る機会が多くなると思われます(注)。よって物語社会という特徴は、2020年代になっても続くでしょう。

物語社会は無数にある物語から影響を受けつつ、自らのことも自己物語として語って行くことが多くなる社会です。

ここで問題となるのが、物語がうまく創れない、あるいは周りの環境が変わった等で物語を創り直さなければならない時が生じた場合です。

個別化が進むがゆえに、周りの物語を参考にしにくくなり、すぐに創り直すことができずに途方に暮れるというときもあるでしょう。

ここにキャリアコンサルタントの役割があると筆者は考えています。

働くことを中心とした1人1人の「小さな物語」をともに考えるパートナー。自己物語としてのキャリアが上手くいかない、もっと改善したいときに力強く支えていく存在。それがキャリアコンサルタントであると思います。

物語社会の2020年代は、キャリアコンサルタントを必要とする方々が増えると予想します。1人1人がオンリーワンの自己物語を創り、日々を充実して過ごせるように。もっと身近な存在としてキャリアコンサルタントが活躍できる社会の実現を期待しています。

最後に、自己物語の主人公は自分自身です。ですが、ご自身の自己物語に登場してくる方々もまた、それぞれの自己物語の主人公です。

決して、自分自身の自己物語が思い通りに行けさえすればよいと考えないでください。物語「社会」を生きているのですから。相手の自己物語も尊重しつつ、最適な物語を創っていきましょう。この調整もキャリアコンサルタントの1つの役割となり得るでしょう。

以上で本コラムを終えたいと思います。本コラムが読者の方のキャリアに、少しでも参考になれれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

(注)ここではキャリアという言葉を、仕事だけでなく、仕事以外も含めた広い意味で使っています。趣味や地域活動といったフィールドでも、何年も続けていたり成果を出したりしていると思われます。それらもキャリアの一部として捉えることで、オリジナルなキャリアを語っていくことになると思われます。

(2018年12月7日掲載)

前回のコラムでは、物語社会の特徴の一例として、ポピュラーカルチャーとそれを受け取る人々が「小さな物語」を相互作用で創り出し、自己物語やキャリアに影響を与えることもあるということを取り上げました。

それでは物語社会の中で、私たちはどのように「自己物語としてのキャリア」(図3参照)を創り上げ、更新していけばいいのでしょうか。今回はこの点について、キャリアカウンセリング理論を交えながら考えていきます。

まず本コラムのキーワードである「物語」は、「ナラティブ(narrative)」として医療や福祉の分野で注目され続けており、ケアや援助の際に「ナラティブ・アプローチ」と呼ばれる、対話を通して語り手のより良い自己物語を創り上げることで状況を改善していく試みが行われています。

このナラティブ・アプローチは心理療法の分野に導入され、「ナラティブ・セラピー」として理論化されています。

やがてキャリアカウンセリングの分野でもナラティブ・アプローチを導入する動きが活発になります。多くの研究者がその成果を発表していますが、ここでは最も有名なマーク・L・サビカスの「キャリア構築カウンセリング」について触れてみましょう。

サビカスは自らのキャリア構築理論を実践する中核として、キャリアストーリー・インタビューという、以下の5つの質問を1問ずつ投げかけることを示しています。

第5回コラム 表6.jpg

それぞれの質問に対する回答(=ストーリー)をじっくり聴いたあと、その語りの背景にある共通性・継続性・再現性などを探り、一貫した「金の糸」とも呼ばれているキャリア・テーマを導き出します。

そのテーマを軸に、過去のキャリアを捉え直し、現在のキャリアの問題点を明確化し、未来のキャリアを描く一連のストーリーを創り上げ、最終的に行動へとつなげていく。この一連の流れが「キャリア構築カウンセリング」となります。

ではサビカスのキャリア構築カウンセリングを、物語の視点から捉えてみましょう。

表6にあるキャリアストーリー・インタビューの②③では雑誌・テレビ・本・映画と、「小さな物語」についてストレートに聴いており、どのような相互作用がご自身との間で生じているのかを探っていると考えることができます。

また①④⑤も理由を掘り下げて聴くことで、自分自身が体験した・経験した「小さな物語」が語られる可能性が高いと思われます。「大きな物語」が語られる可能性もあるかもしれません。

キャリア・テーマは図3で言えば、自己を貫く矢印と見立てられるでしょう。テーマに基づくストーリー創りは円柱と見立てられ、カウンセリングの効果が高いほど、円柱が太く力強いものになると考えられるのではないでしょうか。

ですから、サビカスのキャリア構築カウンセリングは、自己物語としてのキャリアを創り上げ、更新して行く具体的な方法として実用的だと思われます。物語社会の中で、どのような物語に影響を受け、その結果どうありたいと思っているのか。自分自身を解きほぐすきっかけになると思います。

筆者は自分自身で表6を回答してみましたが、②の好きなテレビは小さい頃欠かさず見てた『マジカル頭脳パワー』といったクイズ番組が多く挙がり、①の憧れてた人も、それらの番組で毎回高得点を取っていた回答者のタレントでした。

④の指針となる言葉は、あるヴァイオリニストのキャッチフレーズだった『知的な情熱』。
これだけでも、「知識や教養に強く魅かれており、知識や教養のある人間になりたい」とテーマが浮かび上がってきます。

皆様も自己物語としてのキャリアを考えてみたいとき、キャリアストーリー・インタビューを受けてみる・やってみるのはいかがでしょうか。実施する際は、下記参考文献欄のサビカスの著書をご一読ください。詳細な理論・手順と注意事項が書かれています。

<参考文献>
● サビカス(日本キャリア開発研究センター監訳)『キャリア・カウンセリング理論』,福村出版,2015
● 渡部昌平編『社会構成主義キャリア・カウンセリングの理論と実践』,福村出版,2015

(2018年10月4日掲載)

前回のコラムでは、自己物語が私らしさを創り上げていくのではないだろうか。そして自己物語を語る際、社会にある多種多様な「大きな物語」「小さな物語」との相互作用が生じ、影響を受けているのではないだろうかと述べました。

今回は前回までの内容を踏まえ、「小さな物語」との相互作用の具体的な例として、ポピュラーカルチャーの1つとして現代に定着したAKB48を題材に考えてみます。

一見、個々人のキャリアとは全く関係がない現象を取り上げているように思われますが、私たちの身近にあふれているポピュラーカルチャーが、実は影響を与えている一面があるのではないかと筆者は考えていますので、1つの試みとして取り上げてみましょう。

2018年6月16日、第10回AKB48選抜総選挙の開票が行われました。AKB48の中で一番大きなイベントであり、地上波のテレビ放送もあったので、ご覧になった方もいらっしゃるかと思われます。

この開票だけを見ていると、単純に毎年人気投票の結果を発表しているに過ぎないと思われるかもしれません。

しかしながら10回と開催を重ね、立候補を毎年していると、そこには物語が生まれてきます。

実際にYさんとZさんの選挙結果を概観してみましょう。2人とも、テレビや雑誌などに出演する機会が多くなる16位以内の「選抜」を目標としていました。(表4参照)

コラム4 表.jpg

Yさんはデビュー直後から話題を集め、順調に順位を上げ、一昨年には選抜入りを達成しました。しかし昨年は初めて順位を下げ、アンダーガールズとなり選抜から漏れてしまいます。その悔しさを胸に、1年間活動をしてきた結果、今年は選抜へと返り咲きました。

ZさんはYさんとは異なり、一気に注目を得ることができず数年間苦労していました。それでも地道に個性を出しつつ活動を続けていくと、フューチャーガールズ、ネクストガールズと徐々に順位を上げていきます。そして今年、順位が20もアップし、アンダーガールズに。苦労が着実に実を結びつつあり、『今年も選抜に届かなかった悔しさはあるけれど、諦めなかったからここまで来れた』と語っていました。

YさんZさんだけでなく立候補者の数だけ、上記のような順位が生み出す「小さな物語」が創られ、応援する方々は各々共感していく側面があると思われます。

もっとも「小さな物語」は総選挙の時だけでなく日頃から創られ続けています。図5のように、公演・コンサート・握手会などのイベントでの体験や感想をSNSで共有したり発信したりして1人1人が独自の「小さな物語」を創り、続きを更新していると考えられます。またSNS上でメンバーとの交流も日々行われており、やはり独自の「小さな物語」が相互作用で創られていると思われます。

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物語を創るという視点から総選挙に投票するという行動を考えてみると、上記で言えばYさんやZさんの物語に能動的に関わることができるという実感を得られることになります。

実際、「選抜」に入れば出演機会も増え、彼女たちのキャリアに好影響を与えることができます。例えばZさんを応援する人は『来年こそ選抜に入って苦労が報われ活躍してほしい』といった物語を描き、Zさんとも共有することで来年も投票することでしょう。

応援する方々にとっては、アイドルとの相互作用で創られた「小さな物語」は、ご自身の余暇・趣味としてのキャリアを形成していくことになります。また一生懸命に頑張る姿に刺激を受け、ご自身のキャリアを真剣に考え直し、自らの理想のキャリアを実現させた方もいます。まさに「小さな物語」がキャリアに影響を与えた一例です。

今回はAKB48を取り上げましたが、身近にあふれている様々なポピュラーカルチャーが「小さな物語」を無数に創り、キャリアに影響を与えることもあるということがイメージ頂けたら幸いです。

(2018年8月1日掲載)

前回のコラムでは、現代社会は無数の物語がひしめき合う物語社会と言えるのではないかと述べました。今回は物語社会の中での人について取り上げます。

この点を考えるにあたり、筆者の学生時代の記憶を手がかりにしてみましょう。

筆者は大学進学時、社会学を専攻することは決めていましたが、卒業後に就きたい職業は全くイメージをしていませんでした。

大学に入学すると、同じ社会学部生の中には、就きたい職業・志望する業界が明確な学生もおり、漠然とした不安を持ち始めました。

「私はこれから何をすればいいのだろう」「私らしさって何だろう」この問いは「自分探しをしなきゃ」という思いを生みました。

それから幅広い領域の勉学を中心に、学生相談室のグループワーク合宿・懸賞論文の応募・テープ起こしのアルバイト等々を経験してきました。

やがて大学を卒業し、社会人経験も重ねた今、自分に問いかけます。「果たして自分探しの結果、自分は見つかったのだろうか」と。

答えはもう明らかです。「自分を探したけど見つからなかった」
ここから言えることは、自分は外部にはいない。内部にのみ存在するということではないでしょうか。まだ見ぬ自分が外部にいるはずだから探すと考えるのではなく、自分の経験や体験といった内部の記憶を思い起こして自分を創り上げていくと考えられるのではないでしょうか。

例えば、ある女性は小学生の時、公園のベンチでドーナツを友達と食べていました。すると突然、鳥が女性の所にやってきてドーナツを食べてしまったそうです。その時の恐怖感からか、以来、彼女は鳥が大の苦手となり、公園のベンチに座ることも極力避けているそうです。

この例は彼女にとって、「鳥が大の苦手である自分」を決定づける物語です。このような形で自分の経験や体験を語ることを「自己物語」と言います。

自己物語を積み重ねることで、私らしさ・自分らしさが明確になり、アイデンティティの形成につながってきます。学校での体験・会社での経験・外出先での体験等々、性格テストや履歴書だけでは判断できない「人」が自己物語で見えてくるのではないでしょうか。

キャリアを考える際も、仕事上の成功体験・失敗体験や、興味関心が変わった体験等を自己物語として語っていくことでより明確になってくるでしょう。キャリアを自己物語として描いてみることは大変有用だと思います。


それでは前回取り上げた物語社会をここで思い出してみましょう。物語社会を生きる私たちは、主に「小さな物語」の影響を受けながら日々を過ごしています。よって自己物語も「小さな物語」の影響を、人によっては「大きな物語」の影響も受けていると考えられるでしょう。

前回のコラムと今回書いてきた内容をまとめると、図3のようになります。

第3回コラム 図2.jpg


現在の社会に自己(=自分)が存在しており、過去・現在・未来のキャリアを自己物語として語って行きます。その際に、社会にある様々な「大きな物語」「小さな物語」との相互作用が生じ、キャリアに影響を与えるときがあると考えられるのではないでしょうか。

ご自身のキャリアを棚卸する時、またキャリアの相談を受ける時、上記の図を参考にしつつ自己物語を語って頂くと、新たな発見があるかもしれません。

(2018年6月12日掲載)


前回のコラムでは、物語とは何かを確認し、私たち人間にとって非常に身近な存在であることを取り上げました。

今回は、戦後から現在までの日本社会を物語という視点で考えてみましょう。

ご存知の通り、戦後の日本は高度経済成長によって復興を成し遂げました。
この背景には、理想の生活としてアメリカの家庭生活が提示され、理想に向かって日本全体が大量生産・大量消費を行ったという一側面があります。

例えば「今月のボーナスでいよいよ洗濯機が買える。どんなに便利な生活になるのか。空いた時間はデパートにでも行こうか。楽しみだ」という会話があったことでしょう。

これはつまり、「生産も消費もアメリカに追いつき追い越せ」という日本復興の物語があったと言えるのではないでしょうか。

このような「国家や人類の進化・発展を前提とした、大多数の共有を志向する物語」のことを、フランスの哲学者リオタールは「大きな物語」と名付けました。

復興後、高度経済成長は終わりを告げます。一通り理想の生活が実現したことで、「大きな物語」を読み終えてしまいました。

すると、消費が個人化・差異化・多様化へと向かったように、一人一人の個性を重視するように社会が少しずつ変わり始めます。

物語もドラマ・映画・マンガ・ドキュメンタリー等、数多くの中から自分自身の興味に合う身近な物語に大きな関心を示すようになります。これらの物語を「大きな物語」に対して「小さな物語」と名付けましょう。

図1のように、「小さな物語」は高度経済成長の時代にも存在していました。しかしながら、「大きな物語」の影響が強かったために、その存在がクローズアップされてこなかったと考えられます。

第2回コラム 図1.jpg

これ以降「小さな物語」が主流となりますが、現在はSNSの普及もあり、図2のように「小さな物語」や様々な体験・経験から、個人がオンリーワンの「小さな物語」を創ることも多く行われるようになってきているように思われます。

第2回コラム 図2.jpg

例えばSNSで仲間を集い、ハロウィン等のイベントに一緒に参加する。そこでの体験をSNSに写真等をアップし、物語化して共有し合うといったことが挙げられるでしょう。

「小さな物語」を読み込む上に、物語を創ることも行っている。物語の量という点では、ますます増え続けていると考えられます。まるで社会は物語であふれているように見えてきます。

ここから筆者は、多種多様な物語が日々無数に創られ、ひしめき合い、個々人に影響を与えている社会を「物語社会」と名付けました。

では「物語社会」は消費や生活面だけでなく、働き方やキャリアにも影響を及ぼしているのでしょうか。

高度経済成長の時に確立した「日本型雇用制度」という「大きな物語」は転換期を迎えており、雇用の流動化・柔軟化が進み、非正規雇用者・フリーランスで従事する方々が増えていることはしばしば報道されています。

この労働環境の変化に対応するために、個々人のキャリアという「小さな物語」を節目節目で考え、創り上げ、時に発信することが重要になってくると考えられます。

この点を踏まえつつ、次回は、「物語社会」の中でどのように人は自らの物語を創るのか、考えてみたいと思います。

(2018年4月13日掲載)

皆様、初めまして。澤邉大樹と申します。

まずは自己紹介。
筆者は学生時代に社会学を専攻する中で「物語」というものの見方に
興味を持ち、人・社会における「物語」の影響を考え続けています。
一方で、大学時代に履修した産業心理学をきっかけにキャリアへの興味も持ち始め、
こちらは大学卒業後に本格的に学び続けています。

2つの分野を学び進めるうちに、ある日ふと思いました。
「キャリアを考えることは物語を語ることそのものではないだろうか」と。

今までは別々に考えてきた「物語」とキャリア。
両分野の融合を試み、そこから新たな考え方や視点を探っていきたいと
思っていたところ、本コラムの依頼を受けました。

今回から6回にわたって、「物語」をキーワードに、広くキャリアについて考えてみよう
と思います。どうぞよろしくお願いいたします。

早速ですが、皆さんは「物語」と聞いて、具体的に何を思い浮かべるでしょうか。

桃太郎や浦島太郎と言った昔話でしょうか。源氏物語や枕草子と言った古典でしょうか。
舞姫や蹴りたい背中と言った小説でしょうか。
あるいはテレビやインターネット動画で配信されるドラマやドキュメンタリーでしょうか。
それともお気に入りの映画でしょうか。

他にも様々な物語が思い浮かんだと思われます。物語と一口に言っても多種多彩。
日常生活ではよく見かける言葉ですが、改めて物語とは何かと考えてみると、
実は範囲が広く捉えどころのないように思われるのではないでしょうか。

そこで本コラムでは、どの物語にも共通するエッセンスを抽出し、
「物語」を「時間軸に沿った2つ以上の出来事を結び付けて組み立てる語り」と定義します。
先ほど皆さんに思い浮かべて頂いた物語も、
この定義に当てはまった展開がされているはずです。

さて視点をご自身の日常に向けてみましょう。
知らず知らずのうちに「物語」を創っていませんか?
例えば営業マンが社内で同僚に、

『昨日の午後、得意先に新商品の提案のために向かう電車の中で、
違う資料を持ってきていたことに気付いて。慌てて引き返したんだけど、
その時に転んでしまって膝を擦りむいてしまったよ。
応急処置をして、得意先には何とか間に合って、
提案は好印象だったからよかったけど、
外出前に資料を確認するべきだと反省したよ』と話した。

これも「物語」と言えるでしょう。日々生活していると、些細なことであっても様々な
出来事が起きます。その出来事を周りの人々に伝える。
その際に、私たちは「物語」を創っては語っているケースが意外と多いのです。

皆さんも例えば、昨日の1日を振り返ってみてください。
そしてそれを身近な人に話すことを想定してください。
「物語」を創っている方がきっといらっしゃると思います。

このように考えると、私たち人間と「物語」は非常に密接な関係にあり、
空気のような、とても身近にある存在だと言えるでしょう。
人は「物語」なしでは生きていけないと言っても決して過言ではないかもしれません。

では、この「物語」が私たちにどのような影響をもたらしているのでしょうか。
次回以降、人・社会・文化そしてキャリアと幅広い観点から
掘り下げていきたいと思います。

(2018年2月7日掲載)

★筆者プロフィール★
澤邉 大樹(さわべ たいき)
東洋大学社会学部卒業。専門分野は、消費社会論・メディア論・大衆文化論。
卒業論文では、社会学の観点から「物語」が社会にどのような影響を与えているのかを探求。
卒業後は、IT系企業勤務を経て独立。様々な事業を手掛ける傍ら、早稲田大学、同オープンカレッジにてキャリアについて学び、キャリアを「物語」という視点から探究している。
2017年、オープンカレッジにて修了論文「物語社会の実際 -人はいかにキャリアを物語るのか-」を執筆。















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